「折れた木も
季節とともに朽ちていく
それもまた趣深い」
ふと窓の外を見て
こうつぶやいた
谷川先生。
この言葉の奥深さに
言葉を失った。
目次
景色の捉え方
同じ景色でも
どこに視点を持っていくかで
見え方は大きく変わる。
そして発せられる言葉も
違ってくる。
海がいいね
珈琲屋美豆の窓からは
少しだけ海が見える。
みな、その海に感激して
「海が見えるよ!」
と口々に言う。
それが大多数の見解。
緑がいいね
裏には雑木の森がある。
そういえばかっこいいものだが
雑木の森とは言っても、ただ
空き地に木が生い茂っているというもの。
しかし緑を感じることができる。
「緑があっていいですね!」
そんな風に言ってくださる方もあり
緑に癒されているようだ。
枯れ木がいいね
冒頭の言葉
「折れた木も
季節とともに朽ちていく
それもまた趣深い」
こんな風に感想を述べた方は
谷川先生だけ。
確かに、窓から見える景色の中には
切り倒した木の丸太が積み上げられている。
月日が流れ、それは少しづつ朽ちつつある。
また、生えている木々も
枯れているもの、
今にも折れそうなもの、
そんな状態のものもある。
その風景を見て
こんな感想を述べたのだ。
同じ景色
窓の景色を切り取ると
海、緑の木々、丸太、
確かに色んなものが映り込む。
よく考えれば
結構いいポジションに
枯れた木々は映り込む。
それなのに人々から
それについて何か言われることは
ほとんどない。
海や緑の木々
やはりそこに目を奪われる。
自然が織りなすもの
海も山も自然にそこにある。
そして枯れていく木々も
自然が作りだすもの。
先生は言う。
「人間が綺麗に整えて作り上げたもの
それは確かに美しい。
しかし、こうやって自然が織りなす風景は
どうやっても真似できない
人の手が加わらない美しさがある。」
森は平和
この辺りを散策していると
森の声が聞こえてくる気がする。
色んな生き物の声
木々が揺れる音
森は生きているんだなと感じる音。
この中では
動物や植物がそれぞれの生活を営んでいる。
森はたくさんの命を抱えながら
自然と生きている。
そんなことを思うと
先生が言った一言が
よみがえる。
「森は平和だ。」
視野が広がる
見方を変えるだけで
今まで気にしなかったものが
際立って見えてくる。
色んなものが
不思議と目に飛び込んでくる。
その時気付く。
自分がどれだけ狭い世界にいたのか。
見えているはずなのに
目に入っていなかった
それらのもの。
もしかしたらずっと気づかずに
過ごしていたかもしれない。
なんてもったいないこと。
生命の営み
木々が枯れ行く姿
最近は
そこにこそ本当の生命力を感じる。
緑が青々と綺麗な様も
確かに生き生きとして
癒しを感じる。
しかしその過程を経て
命尽きるその瞬間まで
必死に枯れ行く姿。
改めて観察すると
凄まじい生命力を感じる。
それからというもの
視線を向ける方向が少し変わった。
それは自分の生きる世界が
少し広がったと言ってもいいだろう。
おわりに
谷川先生との会話の中で
自分自身考えさせられることが多い。
今まで気にしなかったものが
不思議と目に入るようになる。
また
やはり芸術家の視点は
一味違い、だからこそ
あんな素敵な作品が作り上げられるのだなと
理解した。
自分とは違う世界に生き
違うものを見てきた人と
視点を合わせることで
その人に人生を少し垣間見れる
そんな気がする。
これからもそんな出逢いを
大切にしていきたい。
最後に谷川先生の作品を一つご紹介。
「私が文章を書く動機はその対象が好きだという情動から始まる」
そんな谷川晃一氏の世界観が垣間見れる
美術エッセイ43篇からなる本。
美術に興味がなくとも、物の見方が変わるかもしれない
そんな興味深さを秘めた作品。
図版:カラー8点/モノクロ33点掲載。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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